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2024.11.01

遺跡の話

こんにちは。

不動産コラム担当 市原です。

 

今回は「遺跡」の話です。 

 

遺跡…埋蔵物文化財のことで、地中障害物のひとつです。 

土の中は見ることが出来ません。 

掘ってみなければ何が出てくるかわかりません。 

ボーリング調査等の地盤調査でも地中の一部のサンプリングなので、地中内の全てがわかるわけではありません。 

 

地中障害物の代表的なものを挙げると… 

 

1.地下水 

雨であったり、地下水であったりします。たまに水道管が供給源の場合もあります。 

水量が多い場合は対策が必要な場合があります。 

 

2.産業廃棄物 

昔は田んぼだった土地を畑や宅地にする場合、今でいう産業廃棄物(雑木、石、人工工作物等)を搬入して、土を被せて地盤を補強することがありました。区画整理された土地でも産業廃棄物が大量に埋まっていたことがありました。 

工場があった場所では、有害な工場廃液により土壌汚染の可能性もあります。 

 

3.汚水・生物の痕跡 

養鶏場や豚舎、牛舎跡等には、動物の排せつ物や骨が埋まっていることがあります。 

下水が整備される以前は、畜産による動物の汚水は川への放流もあり、肥料として利用できたことから、敷地内に留置されることもありました。 

地中からは動物の骨が出てくることもあります。 

大型哺乳類の骨の場合は大騒ぎになる事もあります。 

 

4.建築物の残骸 

鉄筋や鉄骨構造の建物は、建物自体の重量を支える為に、支持地盤まで杭による地盤改良工事が施工されております。地上の建物自体を解体しても地中の杭は全て撮り尽せないこともあります。

また、昔の軟弱地盤対策で鋼管の杭やコンクリート杭が普及する前は、松を杭として打っていたこともあります。松は油分を多く含んでいるため、地中でも腐りにくいので使用されていたようです。

 

5.遺跡 

都道府県に指定された「文化財包蔵地」では、住居跡や土器及びその破片が出てくる場合があります。たまに「文化財包蔵地」以外でも遺跡は出てくることがあります。 

いずれにしてもあまり歓迎できません。 

埋蔵文化財の発掘調査には費用と時間がかかりますので大変です。 

 

 

遺跡に関する文化財保護法令は明治時代まで遡りますが、第2次世界大戦後においての起点は昭和25年となります。昭和24年に法隆寺金堂壁画の焼失をきっかけに始まりました。 

法律制定から現在までの間に、文化庁が設立されたり、文化財保護法自体も何回か改正されております。 

埋蔵文化財について、まず基本的な事柄を説明します。 

 

・埋蔵物文化財に関する窓口…市区町村及び都道府県 

・担当部署…教育委員会 

・埋蔵文化財包蔵地の交付先…市区町村の教育委員会 

・埋蔵文化財の所有権…文化財と認定されたものの所有権は国又は都道府県又は市区町村 

・埋蔵文化財の費用負担…原則、土地所有者(※補助金制度を確認すること。) 

 

埋蔵文化財の費用負担が原則、土地所有者となります。 

補助金が出る場合もありますが、発掘費用全額は補助金で支給されません。 

重要な埋蔵物の所有権は行政(国、都道府県、市区町村)となります。 

たまに大判小判が出てくることがありますが、土地所有者としては、所有権が行政、ということには納得しづらいですよね。 

 

↑ 参照:横浜市文化財ハマsite

 


 

発掘調査への流れ 

 ①市区町村の教育委員会で造成土(遺跡上の表層土)の厚さを調べる。 

 ②建物の配置計画を決める。 

 地盤調査の結果に基づき、基礎形状と地盤改良方法を決める。 

 ④地盤調査の結果及び盛り土等により試掘調査の可否を確認する。 

 ⑤試掘調査が必要な場合は市区町村の指示に従い、試掘調査をする。重要な遺跡である 

  ことが確認できた場合は、都道府県に発掘調査の届出をして発掘調査に入る。 

 

まず最初に「埋蔵物文化財」を傷つけないで建築できるか確認が必要です。 

 

各市区町村の教育委員会では、埋蔵文化財包蔵地の造成土(遺跡上の表層土)の厚さが決められているケースがあります。造成土は掘削可能な土のことです。過去の試掘調査等がデータベースになっていると思われます。 

 

建物の配置計画に基づき、地盤調査(スウェーデン式サウンディング調査)により、地盤強度に対して有効な基礎形状と地盤改良方法を決めます。 

この時点で造成土下の埋蔵文化財想定深度を傷つけないことが確認出来れば、都道府県に対して文化財保護法第93条の届出をして、試掘調査及び発掘調査は回避できます。  

 

地盤改良方法の中で埋蔵文化財包蔵地に有効なものがあります。 

「シート工法」という地盤改良方法で、樹脂製シートの上に建物を載せる工法です。 ただし、使用できる条件がありますのでメーカー側の確認が必要です。 

 

盛り土による発掘調査の回避も可能ですが、地盤強度の確認及び特定盛り土規制法や宅地造成規制法の適用を受けると更に費用と時間がかかりますので、注意が必要です。 

 

試掘調査は、市区町村で指定した試掘箇所を重機で掘削して調査します。建物配置の場所を掘削します。試掘費用は原則、市区町村負担となっておりますが、確認が必要です。

試掘調査により、都道府県により発掘調査の可否が決定されます。 

 

発掘調査には市区町村から補助金が交付されることがありますので、確認が必要です。 

また、埋蔵物文化財発掘調査費用は住宅ローンの対象外となります。 

 


 

鶴岡八幡宮の近くで聞いた話ですが、鉄骨構造による建造物の発掘調査の際に、江戸時代から鎌倉時代の遺跡が出てきた、との事でした。

それぞれ調査が入った、との事でした。 

建築主の方は、わかっていてもうんざりしたと思います。 

  

 「遺跡があるという事は、昔から住みやすい場所」と説明する不動産業者もおりますが、遺跡が存在した時代に、現代と同じようなインフラ環境や住環境ではなかったと思いますし、遺跡の文化的背景が異なれば現代において住みやすい場所とは限らない、と思うので、不動産業者のいう事は鵜呑みにしないようにしましょう。 

 

埋蔵文化財包蔵地区は市区町村や都道府県で公表されておりますが、埋蔵文化財包蔵地であっても、発掘調査済みの場所もあります。 

既に発掘調査済みである為、不動産広告において事実を記載しない不動産業者もいます。 

通常ならば、重要事項説明が必要な内容ですので、事実関係が重要事項で説明されているか、確認が必要です。 

 

↑ 鎌倉市南東部 埋蔵文化財マップ

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