2024.10.07
ハザードマップの話
不動産コラム担当 市原です。
近年、地球環境の変化に伴う異常気象が増加しております。
日本も今年は全国的に高温化しており、台風やゲリラ豪雨により、河川や内水氾濫、土砂崩れが多発しております。
国も地球環境の変化による災害数に対応するように、年々規制を厳しくしております。
しかしながら、少子化による労働人口の減少や予算等の複合的な要因により、行政の対応が遅れているのが現状です。
最近では、不動産売買契約の際には、「ハザードマップ」なるものが提示されるようになってきました。
ハザードマップとは何でしょうか?
行政機関により、災害の可能性があるエリアを設定して、不動産を購入する人に理解してもらう為の地図(マップ)です。
主にどのような地図があるかと言うと、
①津波 ②洪水 ③内水 ④高潮 ⑤土砂災害
があります。
この全てに対して安全な場所ならば被害に遭わないかというと、そうとも限りません。
ハザードマップの公表により、エリア指定がされていないから安全が保証されているわけではない、という事です。
↑ 金沢区土砂災害ハザードマップ
↑ 逗子市土砂災害ハザードマップ
先に挙げた6つのハザード発生による2次被害により、被害を受ける場合もあります。
東日本大震災の浦安周辺の例もあります。
東日本大震災前は、浦安エリアはディズニーランドや海が近いこともあり、非常に人気があり、地価が高いエリアでした。
しかし不動産業関係者からは、以前から埋立地としてのリスクを懸念する声がありました。
その声を証明するかのように、東日本大震災では液状化現象が発生し、家自体は被害がなくとも、敷地や道路の沈下により、車両の通行が困難となったエリアがありました。
能登や熊本の地震においても、インフラ(電気、給水、下水、ガス)の配線や配管が被害を受け、地震後に住める家であっても生活が困難となる場合がありました。
2019年の台風19号では、内水氾濫が生じた武蔵小杉のタワーマンションの電源部が浸水して、上下水や電気の供給が出来なくなったことがありました。
住宅自体の問題もありました。
昭和56年6月1日から新耐震基準による建築確認により建築された家でも、熊本地震では複数回の地震には耐えられず倒壊した家もありました。最近では地盤調査と地盤改良は建物建築前に実施しておりますが、当時はそのような規則もなく、軟弱地盤上の建物が倒壊した例もありました。
当時の家は現在のように性能重視ではなく、間取り優先で作られた家もたくさんありました。
それでは絶対に安全な土地はないのか?
この問いに対しては誰も答えられません。
現状では、相対的な判断により比較的安全な土地を探すことが賢明ではないでしょうか?
それではそれぞれのハザードを解説していきましょう。
1.津波ハザード
津波が発生した場合、津波の高さにより被害が生じる可能性がある場所が示されております。津波ハザードに指定されているエリアについては、長らく被害が大きい地震が発生していないので、どの様な被害が生じるか分かりませんが、想定できることとして、
地震と同時に液状化現象の発生の可能性があります。液状化現象が発生した場合は、道路が使用できなくなる可能性を想定して、有事の際の避難場所を決めておくことが大切です。高くて堅牢な建築物や高台、山等が考えられます。
津波は津波発生から到達迄の時間の計算が困難です。
津波は時間との勝負です。
津波ハザードに住む場合には、津波被害により家に住めなくなることを念頭に置いて住む必要があります。
2.洪水ハザード
降雨等による河川等(湖、池)の氾濫による被害が想定されております。洪水による被害の可能性を確認する為に必要なことは、洪水を引き起こしそうな河川等の被害履歴を行政機関で確認することです。更に、洪水を引き起こしそうな河川等の整備の確認と整備後に洪水履歴があるかを確認することです。また、近くの川が河川整備されていても、その上流域が河川整備されていない場合に被害が生じる可能性があるので、その点も確認が必要です。
3.内水ハザード
大雨等により下水が許容量を超えて逆流して氾濫を起こす被害が想定されております。都市開発が遅れている地域に起こることがよくあります。例えば東京都杉並区善福寺川流域や鶴見川、境川流域は発生することがあります。下水管敷設当初、現在の降雨量を当然想定していない為、細い下水管のまま、近年のゲリラ降雨の発生により、逆流して冠水してしまいます。こちらも対策としては、過去の被害履歴と対策工事履歴を行政機関で確認することをお勧めします。
4.高潮ハザード
発達した低気圧や台風の影響により海面が異常に高くなり、浸水するエリアを示すハザードです。シーサイドや河川整備されていない川で発生する可能性があります。津波や洪水ハザードと重なる可能性がある為、高潮ハザードがない地域もあります。
5.土砂災害ハザード
地すべり等による土砂崩れや土石流により被害が及ぶ可能性があるエリアを示すハザードです。東日本大震災前後から注目されたため、それ以前は関係なかったエリアが数多く指定されております。その為、行政による対策が追いついていないのが現状です。
土砂災害特別警戒区域に指定されると、安全が担保されるような宅地造成なしに建物の再建築や新築ができません。
その他にも行政によっては、液状化マップや地震揺れやすさマップ、南海トラフ他各想定地震による被害想定が記載されているものもあります。
それでは、
ハザードに指定されているエリアは検討すべきではないのか?
それについては、答えはありません。
海が好きだから海の近くに住みたいお客様にとっては、津波ハザードや高潮ハザード、洪水ハザードは覚悟しなければ買えません。
そのようなお客様には、覚悟の上で不動産を検討していただきます。
また、
ハザードに入っているから危険、ハザードに入っていないから安全なのか?
答えは、ハザード内は危険な傾向はあるものの、災害が発生する確証はありません。
また、ハザードに入っていなくても行政は保証もしてくれませんし、今後、別のハザードに指定される可能性はない、とは言えません。
ここまでお話しすると、安全な土地はあるのか?という事になりますが、私見ではありますが、全てはご本人の判断に因るところとなります。
例えば、
津波や地震のハザードについては、想定する地震の発生確率や過去の地震に因る津波の被害履歴の有無を確認して判断する。
内水氾濫については、内水氾濫が発生して以降、河川整備がなされているかを確認する。
土砂災害については、過去の災害履歴と宅地造成の履歴、地盤調査結果を確認して判断する。
その一つ一つを面倒臭がらずに丁寧に確認して判断することが必要です。
安全の担保は、そこにある現実でもありますが、確認や対策により、ある程度安全対策することにより確保するものだと思います。