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2024.08.09

敷地境界のおはなし

本日は敷地境界の話をします。 

 

土地というのは資産なので、資産をお金に換算する為に、土地の大きさというのは非常に 

重要な要素です。 

土地の大きさを計算する時に境界を元に面積を割り出し、お金に換算します。 

 

昔は、隣地との境界を示す為に、境界に木を植えたり、大きな石に印をつけて境界にしました。 

今は、コンクリート杭、金属標、鋲等で境界を明示します。 

↑ コンクリート杭

 

↑ 鎌倉市コンクリート杭

 

↑ 金属標

 

↑ 金属鋲

 


 

東京圏では、1945年以降の人口増加や農地改革や財閥解体に伴って、

沢山の土地分譲 が行われました。 

 

法整備が整っていなかった当時はかなりいい加減な土地分譲だったようです。 

以前勤めていた会社の社長の話を思い出すと… 

広告もろくにない時代ですから、 

お客様は不動産が欲しい駅前の分譲拠点(本店、支店、販売所)に行き、 

分譲現場という名の田んぼの中に木杭等で囲われた場所を 、

「ここが分譲地です。」 

と言って販売していた、との事でした。 

 

法務局で不動産が扱われ始めたのが1950年頃からですから、当時は詐欺や監禁や脅迫等 

の犯罪行為も横行していた、と聞いております。 

 


 

戦争の影響も薄れ、高度成長期からは地方から大挙して東京圏に働きに出てきました。 

長男は実家を守り、二男以下と女性は、「一国一城の主」又は「狭いながらも楽しい我が

家」を夢見て、争うように土地を求めました。 

 

東京圏、首都圏の人口増加が顕著になると共に犯罪行為等も増加していったので、国は

宅建業法や都市計画法、宅地造成規制法等の法整備を進めていきました。 

また、土地神話(土地価格は上がり続ける)乗じて、不動産業者以外の方による不動産投 

資が増加し、同時に原野商法等の不動産詐欺が社会問題化していきました。 

その影響かもしれませんが、この時期に都内、都下、千葉、埼玉の主要部に不動産を購入 

された方は、ご自身の不動産を自衛する意識が強いことが特徴として挙げられます。 

 

例えば… 

   ・隣地同士の境界立会の際に揉める。 

   ・隣地の建物の配置や窓の位置の変更を求める。 

これらは、自分の住まいの快適な環境作りへの執着が強いことの表れです。 

 


 

ところで、当時は土地の境界を決める為にどのような方法を用いたのでしょうか? 

 

昔は、関係者と合意した境界に木を植えたり、石を置いたりして、境界としました。 

 

最近は、関係者同士で境界合意書又は境界確認書を図面添付で取り交わします。 

更に境界点に境界工作物(石、杭、プレート、鏢等)を設置します。 

 

因みに

隣地所有者が国や県、市の場合は「官民境界」、

それ以外の個人又は法人の場合は「民々境界」

と言います。

境界工作物は、古いものはあまり精度が期待できません。 

東京都では、東京オリンピック(1964年)で急ピッチに道路整備したこともあり、 

都道境界の民有地への越境や逆に都道境界に民有地が飛び出したりしています。 

 

実は、あまりご存じない方も多いのですが、 

「境界」は動きます。 

例えば… 

・地震や土砂崩れ、水害の二次被害等による境界点の滅失、欠損、ズレ。 

・隣地建物、外構、工作物や崖地、斜面による土圧によるズレ。 

 

人為的なミスによるズレや滅失、欠損もあります。

 


 

昔は、土地の面積を算出する方法として、三角測量を基本として測量をしておりました。 

昔は人手による測量なので、精度も低く、高低差の対応力もなく、私の経験では、境界 

杭と法務局に登記されている地積測量図の誤差が3mあったこともありました。

 

最近では、経度と緯度で座標点を定めて、境界点とするので、登記してあれば復元 

することも難しくはありません。 

登記という行為は、第三者に対する対抗要件となります。 

従って、登記後に異議を唱えても認められません。 

境界確認書があれば基本的に対抗できます。 

 


 

因みに、境界杭等により境界を明示する場合、施工誤差として許容されているのは、 

一般的に2~3cm程度です。 

境界工作物の設置自体は今も昔も変わらず人によるものなので、境界工作物と境界点 

の誤差は致し方ありません。 

不動産を購入の際に土地面積の根拠は非常に重要です。 

不動産屋さんは、 

「法務局に登記してある地積測量図があるから大丈夫!」 

というかもしれません。 

 

しかし、境界杭等がなくなっている場合もあります。 

 

「実測図を作ったから大丈夫!」 

というかもしれません。 

しかし、隣地との境界確認書がないかもしれません。 

 

これでは、敷地が確定していないのと同じです。 

 


 

私共不動産取引をする人間は、 

地積測量図が確認できても、 

最初に境界杭や境界標等を必ず目視します。 

法務局に登記している土地の全部事項証明書と地積測量図の精度も確認します。 

 

現地に赴き、境界を探した形跡がない場合は、 

不動産屋さんは現地確認していない、と判断できます。 

そのような不動産屋さんは信用できません。 

 

不動産仲介は他人様の不動産売買を公平な立場で仲介することが仕事です。 

他人様の不動産を取り扱うにもかかわらず、不動産のプロが売買の当事者以上に 

取り扱う不動産のことを知らなければなりません。 

 


 

腰が引けてしまうようなことを書いてしまいましたが、 

敷地の境界に対してどう対処すれば良いか具体的に列記すると、 

 

1.確定測量図の有無と法務局の資料を確認する。 

確定測量図とは、官民すべての境界において確定した時に発行される図面です。 

これが座標点記載で登記されていれば、それを根拠に第三者への対抗要件はほぼ 

万全です。地積測量図や実測図等は、単なる図面であり、隣接地所有者との合意が

根拠となっている図面ではありません。 

 

2.境界を目視で確認する。 

境界が埋まっている場合は、目視できるように掘り出してもらいましょう。

 

3.確定測量図がない場合は、確定測量図を発行してもらうように話をする。 

売主が費用等の理由で確定測量図を作らない場合は、その分、値引いてもらいまし 

ょう。また契約書には、期限を設けて、「確定測量図が発行できない場合は、白紙解 

約する。」と言った契約条項を設けてもらいましょう。 

 

4.境界が見つからない場合は、境界を復元してもらう。 

不動産は売買に出されている以上「商品」として取り扱われます。境界がない土地 

は、それだけで「商品」としては不完全です。境界がなければ復元してもらいまし 

ょう。復元すらしない相手からは買うべきではありません。 

 

敷地境界は不動産取引の基本です。 

商品としてしっかりと裏付けがある不動産を購入しましょう。 

 

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